第2話
峠まで無事に着いた。
とりあえず路肩に車を停めてひと休憩。
もう空は真っ暗になっていた。
コーヒー飲みながら一服したい雰囲気だ。
「やっぱ慣れるまでは緊張感があるなぁ脇汗が・・・」
ここまでの道で素人なりに気付いたことは、サイドブレーキ調整の要あり。ガソリンスタンドで止まった時に引いたらびっくりするくらい上にあがった。
次に気になったのが、アクセルの踏み始めパワーが出ていないこと。
「まぁ古い車だからなぁ。だけどやっぱ楽しい車だわ」
練習中のヒール・アンド・トウも様にはなってきた。
「やっぱこの時間は少し冷えるな」
そんな感じで手を擦り合わせていると、通ってきた道の方から甲高いエキゾーストノートが聴こえた。瞬く間に迫ってきて、もの凄いスピードで横を通り過ぎていく。
「すげぇー・・・スピード出しすぎじゃね?」
少し先の方で止まった。
慌てて車に乗り込む。
「止まったってことは話かけても良いよな」
ゆっくり近づいて行くと車の正体が分かった。
「新しいフェアレディじゃん。カッケーなぁ。どんな奴だよ、ヤンキーとかだったら逃げよ」
車を降りて話かけようとしたら窓が開いた。
「こんばんわ。いつも走ってるの?ここら辺全然わからないんだけど、いいところだね」
まさかの女。歳上のようだけど綺麗でかわいらしい感じの人だ。
「あっ初めまして。この車ついさっき自分のものになりまして、自分の車では初めて来ましたここ」
なんか緊張した。
綺麗な歳上の女の人とは初めて話す。
「そうなんだ。私真奈っていいます。君は?歳下・・・だよね?」
いい匂いがして一瞬くらっとした。
「健太郎です。お恥ずかしながら自分まだ高校3年なんですよ」
さすがにびっくりしている。
「若いとは思ったけど、高校生なんだ。私はもう24だから大先輩だね。だけど高校生には見えないかも」
笑顔が尋常じゃなくかわいい。
少しバカにされてることにも気付かない。
「高校生なのにタイプR乗ってるって凄いね。てか渋いね」
かわいくて完全にニヤけているな俺。
「親父が車屋やってて。ここから車で30分くらいのところなんですけど」
「えっ?車屋なの!?丁度探してたんだよ!今度行ってもいい?」
「全然いいっすよ。住所教えますね」
ちゃっかり自分の電話番号も教える。
横顔がさっきよりハッキリ見えていて、やっぱりかわいい。
「仕事の絡みでこっちに引っ越して知り合いも少なくて結構寂しかったんだよね。職場外友達第1号だね」
「こちらこそお願いします。今日来て良かったですホント」
真奈さんはクスっと笑って
「こちらこそ。近い内に遊び行くね。それじゃあ先に帰ります」
そう言って手を振りながら、甲高い音を上げて走り去って行った。
「人と車のギャップすげぇーな」
やっぱ車っていい。
こんなこともあるんだなと思いながら、今日のところは家に帰ることにした。
さきにあるもの @kadomatsu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。さきにあるものの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます