第6話 おばあちゃん詐欺


「こちら鉄道警察隊です。実はあなたのお孫さんが電車内で痴漢をしましてね」

 そんな電話がかかってきたのは、ワイドショーにも飽きてくる午後3時を少し過ぎた頃。


「本当ですか?」

「被害者の方は示談じだんで済ませてもいいと言っております」

「孫とかわってもらえませんか?」

 そう頼むと、電話の向こうから、すすり泣く若い男の声が聞こえた。


「おばあちゃん、ゴメンよ」

 私は彼を優しくしかってやる。

 そして、弁護士や被害者の父親とも話をした。


 示談金じだんきんは30万円。

 私は使い慣れたスマートフォンで、指定口座に千円を振り込んだ。

 すぐに、弁護士から怒りの電話がかかってくる。

 私は、もう1度だけ孫と話がしたいと懇願こんがんした。


「おばあちゃん、頼むよ」

 さっきの男が電話に出た。

 私は、東京へ行ったきり1度も帰ってこない孫を思って、存分に罵倒ばとうする。そして、追加で千円を振り込んだ。


 暇つぶしにつきあってくれたんだ。

 もう少し払ってあげてもいいかもしれない。

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