第4話 勇者の帰還


 異世界に召喚しょうかんされた少年は、長く苦しい旅の末、ついに邪悪な竜を打ち倒した。そして、塔の上に幽閉されていた姫君を救い出すと、その腕にかたく抱きとめる。彼はついに使命を果たしたのだ。


 たった1人、伝説の剣を求めて各地を歩き、魔法使いの試練に耐えて魔法を身につけ、立ちふさがる凶悪な怪物を倒した。そして、とうとう少年は苦難に打ち勝ち、救国の勇者となったのである。


 しかし少年は、自分の世界へ戻る時間が迫っていることを悟っていた。

 左手に感じるその感触、そして耳に聞こえてくる鐘の音からも、それは明白であった。


 平和を取り戻した世界とも、救い出した姫君とも、お別れである。

 もはや、世界の行く末を知ることはできない。


 そして少年は、図書室の片隅で冒険から帰還した。

 大きくため息をつくと、分厚い本を閉じる。

 そしてランドセルを背負うと、チャイムの鳴り響く学校を後にした。


 明日は、名探偵になって怪盗と知恵比べである。


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