第145話 クイズ研究部、最後の問題


 鍵を開けて部室に入ると、ホワイトボードに新しい問題が書いてあった。

 それは今日卒業する先輩が、僕に残していった最後の問題だった。


 なにか面白いクイズを思いついたら、それをホワイトボードに書く。部員は必ずそれに答えなくてはいけない。間違えてもいいが、パスは許されない。

 それが、我がクイズ研究部に代々伝わる鉄のおきてだった。


 時計を見ると、もうすぐ卒業式が終わる頃だった。もうあまり時間はない。

 僕は先輩が残していった問題をじっと見つめた。自信はなかったが、答えはすぐに出た。たとえ間違っていたとしても、それをなかったことにするよりは、きちんと答えた方がいい。


 僕はホワイトボードをきれいにすると、覚悟を決めて体育館へ走った。

「私の好きな人は誰でしょうか?」

 その問いの答えを、彼女に告げるために。


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