第125話 究極の断面を求めて


 ある夏の日。母が大きなスイカを買ってきて、台所で真っ二つに割った。

 まだ幼かった僕は、あの緑色の表面からは想像もつかない鮮やかな赤い断面に、目を奪われた。


 僕は、母にいろいろな野菜や果物を切ってもらい、その断面を観察した。そしてそれを夏休みの自由研究にした。


 それからだ。なにかの断面を見たい、そう強く思うようになったのは。


 僕は様々なものの断面を調べた。

 野球やテニスのボール。テレビやスマートフォンといった身近な機械。自動車や飛行機、船といった乗り物。

 そして、大地の断面である地層。


 これ以上大きなものはないだろう。そう思って、将来は地層の研究者になろうと決めた。でも僕は間違っていた。ある夜、散歩をしていて気づいたのだ。もっと大きなものがあると。


 見上げた夜空には天の川が、銀河系の断面がそこにあった。


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