第124話 姉のお土産


「ほら、お土産だよ。おやつに食べな」

 ある日曜の夕方のこと。買い物から帰ってきた姉が、熱々のたこ焼きを持って俺の部屋を訪ねてきた。


「珍しいこともあるもんだな」

「たまには、お姉ちゃんらしいことでもしようと思ってね。ほら、冷めないうちにさっさと食べちゃいなよ。美味しいよ」

「サンキュー」


 焦げたソースの香りが食欲を誘う。

 ちょうど腹が減っていたところだ。俺は特大サイズのたこ焼き八個を、あっという間に平らげてしまった。


 しばらくして、階下から俺を呼ぶ母の声がした。その瞬間、俺は姉の作戦にまんまとひっかかったことを悟った。


 その日の夕飯は、焼肉だった。

 たこ焼きが腹の中でふくれていく。なかなか箸が進まない俺の向かいで、姉は俺のぶんまでもりもりと肉を食っていた。 


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