第129話 名探偵はもういらない
「犯人は、この中にいます」
広間に集まった全員の視線が、探偵のもとに集まった。
彼は今年になって難事件をいくつも解決に導き、名探偵として一躍有名人になった人物。そんな彼が言うのなら間違いはないだろうと、誰もがそう思った。
「では、まず犯人が使ったトリックについてお話しましょう……」
探偵は結論を後回しにする。
それは犯人に言い逃れをさせないための作戦だ。
だが、探偵はひとつ大きな間違いをおかしていた。自分が名探偵と呼ばれるようになったことを、すっかり忘れていたのだ。
探偵が推理を披露しようと口を開いた瞬間、ひとりの男が前に出て言った。
「あの、僕が犯人です」
「……え?」
「貴方のような名探偵に疑われたら、もう終わりです。すべてをお話しします」
男はぺらぺらと事件の真相を語りはじめた。
探偵の出番は、もうなかった。
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