第114話 ひとり鍋は最高


「ひとりで鍋料理をするのって最高だな」

「また、強がり言って」

「いや、心の底からそう思うんだよ」

 今年から一人暮らしをはじめたという友人が、嬉しそうにそんなことを言った。


「この間も、ひとりで寝るのは寂しいって言ってたじゃないか」

「確かに夜は寂しい。ひとりで寝てると、静かすぎて落ち着かない。俺は8人家族で育ったからな。祖父母に両親、兄がふたりに姉がひとりだ。静かな夜なんてなかったよ」


「だったら、ひとりで鍋をするのだって寂しいんじゃないか?」

「俺も最初はそう思った。でも、やってみたら違ったんだよ!」

 友人は目を輝かせ、興奮した口調で言う。


「まあ、おまえには大家族の末っ子で育った俺の気持ちはわからんだろうな。いいか? 好きな具を好きなだけゆっくり食えるってのは、本当に最高なんだよ」



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