第98話 運命の出会い
強風にあおられて、目の前を歩いていた老婆が尻餅をついた。
心配して手を差し伸べた僕に、もちろん下心なんてものはなかったけれど、その小さな手を握った瞬間、僕は不思議なことに運命を感じたのだった。
腰を痛めたという老婆を家まで送ると、そこは僕が住んでいるアパートの近所だった。一人暮らしをしているという小さな家に招かれて、お礼にと出されたお茶とお菓子をいただきながら、僕らは少し世間話をした。
それ以来、僕はその老婆のことが気になって仕方がなくなった。
そして、わけもなく近所をうろついては、偶然を装って老婆と挨拶を交わすようになった。
そのうち、僕がふともらした仕事のグチに、彼女が親身になって相談に乗ってくれるようになり、僕らは次第に親しく話すようになっていった。
やはり運命の出会いだったのだ。そう確信するのはその数年後。
僕が彼女のお孫さんと出会って結婚するときのことである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます