第97話 バス停の先へ


「あーあ。学校、通り過ぎちゃったね」

「あーあ。いけないんだ」

 扉が閉まり、バスはゆっくりと走りだした。


 いつもの朝、いつものバス。いつものように一番後ろの席に並んで座り、私たちはいつも降りるバス停を乗り過ごす。


「どうする? もう戻れないよ」

「そうだね。もう戻れないね」

 くすくすと笑みを交わし、車窓を流れていく中学校の校舎を見送る。

 でもしばらくして私が心細くなって隣を見ると、彼女は泣きそうな顔をしていた。


 私たちは幼稚園からずっと一緒、姉妹みたいに育った幼なじみ。

 この先もずっと、どこまでも一緒に歩いていく。疑いもせずにそう信じていたけれど。歩む道は、あっけなく分かれてしまった。


 お互い違うデザインの真新しい制服を着て、私たちはもう通うことのない校舎を振りかえらない。

 バスは駅へ向かう。


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