第95話 父とチョコモナカ
「おーい、アイス買ってきたぞ」
日曜の午後、散歩にでかけていた父が買い物袋いっぱいのアイスを買って帰ってきた。
「いくらなんでも買い過ぎでしょ」
私は部屋に戻る足を止めて父に言う。
「スーパーで安売りしててなあ。冷凍庫を整理すれば、なんとか全部入るんじゃないか? 悪いけど、ちょっと手伝ってくれ」
アイスに罪はない。私はしぶしぶ父に手を貸した。しかし何事も計画通りにすすめるのが好きな父である。珍しいこともあるものだ。
「ほら、やっぱり入りきらない!」
悪戦苦闘の結果、アイスがふたつ残ってしまった。
「しょうがない。溶ける前に食べよう」
父からアイスを受け取る。それは子供の頃、よく塾の帰りにねだって買ってもらったチョコモナカだった。
なにやら満足そうな表情の父を無視して、私はモナカをかじった。
悔しいことに、懐かしい味がした。
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