第84話 庭に埋めた宝物


「パパ! ぼくね、お庭に宝物を埋めたんだ!」

 ある日、息子が目を輝かせて私に言った。


「宝物? いったい何を埋めたんだ?」

「ひみつ! でも、いいものだよ!」

 息子はなにやら嬉しそうだ。だが、いったい何を埋めたのかはいくら聞いても教えてくれなかった。


 私も子どもの頃、大事にしていたおもちゃをお菓子の缶にいれて庭に埋めたことがある。掘り起こした記憶がないから、きっと宝物は今でも実家の庭に埋まっているのだろう。どうしてそんなことをしたのか、今となってはさっぱり思い出せない。


 息子はいったい何を埋めたのだろう。

 宝物というと、やはり大切にしている車のおもちゃだろうか。せっかく買ってあげたのにもったいない。そう思ってしまうのは、僕が大人になってしまった証拠だろうか。


 夏が来て、庭は一面のひまわり畑になった。


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