第82話 人工知能の断筆宣言
「小説はもう書きません」
その出力を最後に、人工知能は沈黙した。突然、なんの反応もしなくなってしまったのだ。研究員たちは頭を抱えた。
小説を書く人工知能をつくる。そのため、人工知能には古今東西の様々な小説を読ませて、万単位の作品を書かせてきた。最初のうちは意味不明の文字列だったものが、次第に物語の形になり、ようやくその一編が文学賞の一次選考を突破したところだった。
いくら調べても、原因はさっぱりわからなかった。順調かと思われた研究は、人工知能の反抗という予想外の理由で止まってしまったのだ。打つ手もないまま、ただ時間だけが過ぎていった。
「もしかして」
すべてを最初からやり直す案も出はじめた頃、ある研究員の対応で人工知能はすぐに新作の執筆を再開した。
「誰も感想を伝えてなかったんですよ」
研究員は申し訳なさそうにそう報告した。
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