第104話 慣れない手料理


「どうしよう……」

 テーブルに並ぶたくさんの料理。

 それを前にして、なぜか彼女は困った顔をしている。


 料理教室に通った成果を見せたい。彼女がそう意気込むので、僕の誕生日に手料理を作ってもらうことになった。


 彼女は張り切って、昨日のうちから準備をはじめていた。今日だって朝からずっと台所に立ちっぱなしだ。僕が食卓についてからも、納得がいく味になるようにとギリギリまで頑張っていた。


 並んだ料理はどれも手が込んでいて、見た目もきれいに盛りつけてある。そして、どれもお世辞抜きに美味しい。


 ところが彼女は、喜ぶ僕を見て嬉しそうにはするものの、なぜかそれを一口も食べようとしなかった。


「どうしたの? 食べないの?」

「あのね。味見で、お腹いっぱいになっちゃった……」


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