第70話 語り継がれる物語
「すると勇者の前に、大きな竜が……」
村の広場では、旅人が語る物語に子どもたちが目を輝かせていた。
「村の仕事をサボるんじゃないよ!」
見かねた大人が叱りつけると、子どもたちはわっと逃げていく。村人の冷ややかな視線に、残された旅人は苦笑いで応えた。
「まったく、作り話に夢中になる暇があるなら、薬草のひとつでも覚えてほしいものだね」
そんな大人たちの目を盗み、子どもたちは旅人に物語の続きをせがんだ。困った大人たちは、とうとう旅人を村から追い出してしまった。
「みんな、よく覚えておけ。この草が……」
「知ってるよ! 切り傷に効く薬草だよね?」
「葉っぱの先が丸いのが特徴なんだよ!」
「おまえたち、いつの間に覚えたんだ?」
「勇者が大けがしたとき、この薬草を使ったんだ! こっちは、火傷に効く草で……」
旅人が語った物語は、村で長く語り継がれていったそうだ。
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