第71話 それぞれの願いごと


「あなたの魂と引き換えに、三つの願いを叶えてあげましょう……」

 男が呼びだした悪魔は、ずいぶんと元気がなかった。どうしたのだろう。男は心配になって、悪魔の話を聞いてみることにした。


「私にも願いごとがあるのですが、悪魔は自分の願いを叶える力を持っていないのです」

「それで、あなたの願いというのは?」

「一度でいいから、人間のように食べたり飲んだりしてみたいです」

「なるほど。では僕がごちそうしましょう」

 男はあちこちから出前を取ると、豪華な夕飯を悪魔にふるまった。


「ごちそうさまでした。これで思い残すことはありません。私の魂を差し上げましょう」

「いえ、僕もあなたに願いを叶えてもらいましたから、これでおあいこですよ」

「どういうことです?」

「また一緒に食事をしましょう。僕は友達が欲しかったんです」 



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