第100話 声をかける勇気
「ジャンケンで負けた方が、あの人に声をかけることにしようぜ」
学校の帰り道。隣を歩いていた友だちが不意に立ち止まり、そんなことを言い出した。
彼の視線の先にいたのは、バス停に立つひとりの若い女性。観光客だろうか。大きな旅行かばんを持ち、何度も腕時計を見て時間を気にしている。
「わかった。一回勝負な」
僕は勇気を出して、彼の提案に乗る。
正直な話、僕はクラスの女子にさえ、緊張してしまってうまく話しかけられない性格。だけど彼だってそれは同じはずだ。見ず知らずの女性に話しかけるなんて、どちらにとっても、ハードルが高すぎる。
それでも、その姿を見てしまった以上、声をかけずに帰るわけにはいかなかった。そんなことしたら、きっと後悔するだろう。
なにしろそのバス停は、先月で廃止になったのだから。
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