第67話 無能王の治世


 ある王国に無能王と呼ばれる王様がおりました。演説をすれば舌を噛み、式典ではすぐに居眠り。人見知りでお酒に弱く、仕事は部下に任せっきり。国民は王様のことを無能王と呼んで、バカにしていました。


 しかし、王様のもとには有能な者が多く集まっていたおかげで、王国は豊かで平和でした。知恵に優れた大臣や勇敢な武将、研究熱心な学者……様々な分野の専門家たちが王様を支え、国を豊かにしようとしていたのです。


 国民の多くは、王様よりも部下たちを応援し、それを知った部下たちは、ますます国民のために働きました。そして王国の発展は、王様がこの世を去るまで長く続きました。


 その後、無能王に代わり息子が王様になりました。彼は賢く勇敢で、国民から慕われる人物でしたが、それゆえ部下たちと意見がぶつかりあい、王国は衰退していきました。


 無能王は無能だったのか。

 歴史家たちは、今でもその問いに答えられずにいるそうです。



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