第66話 余計な一言


「あなたの魂と引き換えに、願いを三つ叶えてあげましょう」

 ある男のもとに悪魔があらわれて、そんなことを言った。


「呼んでもいないのに、悪魔が自分で売り込みに来るとはね。時代も変わったものだ」

「こちらの世界も、不況なものですから」


「知ったことか。そもそも自分の願いは、自分の力で叶えるべきだ。違うかね?」

「残念です。しかし私も手ぶらで帰るわけにはいきません。どうしたらいいでしょう」


「ふん。契約が欲しければ、そのへんにたむろっている若者のところにでも行きたまえ。さあ仕事の邪魔だ。さっさと帰りなさい」

「わかりました。帰ることにします」

 悪魔はうやうやしく頭をさげる。


「お言葉の通り、そのへんにたむろっている若者のところに行ってみましょう。さて、これであなたの願いを二つ叶えました。残りはあと一つですが、何をお望みで?」 

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