第76話 順番待ち


「ねえ、あの子のこと好きなんでしょ? さっさと告白しちゃいなよ」

 休み時間。少女はいたずらっぽい笑みを浮かべ、少年の背中を軽く指でつついた。


「なんだよ、おまえには関係ないだろ」

 少年は不満げな表情で後ろをふりむく。

「なによ、せっかく背中を押してあげてるのに」

「余計なお世話だ。……それに告白なんて無理だよ。彼女、好きな人がいるみたいだし」

 教室を出ていく想い人の背中を見送って、少年は深いため息をついた。


「へえ。相手に好きな人がいたら、告白しちゃいけないわけ?」

「そんなことない、けどさあ……」

 そう言ったきり少年は遠くを見つめ、黙り込んでしまった。


 そんな彼の横顔を、少女はちょっと恨めしそうに盗み見る。

 そして聞こえないように、そっと小声でつぶやいた。

「まあ、わかるけどね。その気持ち」 


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