第39話 面接官


「失礼します」

 気持ちを引き締め、頭をさげる。


 面接官は1人。

 40代男性、係長クラスの管理職とみた。

 彼は笑顔で私を迎えたが、しかし開始5分で豹変ひょうへんした。


「この学歴では、就職活動も厳しいと言わざるを得ないと思いますが」

 数々の面接を経験してきた私は動じない。

 これは、圧迫面接の予兆なのである。


 予想通り、彼は感情を逆なでする質問を連発してくる。こんな時は冷静に、強引にでもポジティブな反応を返すのが最適解。


 しかし、今どき圧迫面接なんてしても、理不尽な指示でも従う奴隷が欲しい会社、とブラック企業の烙印らくいんを押されるだけだ。しかも、ある統計によれば、圧迫面接をする会社の多くが、職場も圧迫された環境にあるというのだ。入社後の人生は、して知るべしである。


 さて、面接も終わり、私はすぐに喫茶店へ駆け込んだ。

 そして、渡されていた書類に「不合格」と書き込む。


 世の中、試験ばかりで面倒な時代だが、この商売はなかなかもうかるのだ。



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