第40話 写真
「ねえ、懐かしい写真がでてきたよ」
アルバムを整理していた妻が、1枚の写真を持ってきた。
「でも、これってどこ?」
写真には、中学生の頃の僕が1人だけ、学ラン姿で写っている。しかし、記念写真にしてはあまりに殺風景な駐車場を背景に、顔もひきつったような笑顔である。
「切ない初恋の思い出だよ」
僕の言葉に、小学校からの幼なじみである妻は不思議そうな表情。
たくさんの思い出を共有し、ほとんど隠し事のない僕らである。
だけど、この写真の秘密は、まだ話したことがなかった。
初恋の相手は、もちろん幼い頃の妻だ。
今でこそ、シャレた言葉のひとつも言えるけど。
あの頃の僕は、幼なじみの女の子とも、まともに話せないシャイな少年だった。
あれは修学旅行最終日、高速道路のサービスエリア。
一緒に撮ろう、その一言が言えなくて。
彼女にカメラを渡して、撮ってもらうので精一杯だった。
妻は、自分が撮ったことも忘れて、しきりに首を
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