第62話 割り切れない


「例えるなら、10を3で割った感じかな」

「なんだそれ?」

「ほら、3.333……って、小数点以下が続くでしょ? そんな感じ」

「なにが?」

「生きる意味とか、自分の存在理由とか、そういう肝心なことがわからないままで生きてる感じが、似てるかなって」

「ああ、つまり割り切れないと」

「そう。どうしてみんな、平気でいられるのかな?」

「割り切れない、って割り切ってしまえば?」

「そんなレトリックでごまかさないで」

「なら、算数で解決すればいい。10÷3は3、あまり1だ」

「小学生?」

「いいんだよ。割り切れないなら、あまりを出せばいい。それに、あまりって案外いいヤツだと思うぞ」

「え?」

「俺、子どもの頃、グループに入れない子だったからね。でも、割り切れないであまる計算って、よくあることだって教わってからは、気にならなくなったんだ。だから、いいんだよ、割り切れなくてあまっても」

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