第61話 イーブン・ゲーム


「どこまで逃げる気だ、あいつは」

 管理区画へと続く薄暗い廊下の片隅。

 ボイルはレーザー銃のバッテリーを交換すると、はき捨てるように言った。


「どこまででも逃げる気だろうさ」

 相棒のノイルが冷静に答えた。


 逃亡犯エルは、星から星へ50年以上も逃げ続けている。

 賞金稼ぎをはじめて10年の2人とは、覚悟という意味で雲泥の差だ。


「だが、あいつの宇宙船はもう動けない。俺たちの船は、あいつには動かせない。この廃棄ステーションが奴の墓場だ」

「油断するな。エルの方が先行してるんだ」


「うるさい。さあ、狩りのはじまりだぜ。待ってろよ、賞金首」

 その時、かすかな爆発音と振動が2人の耳に届いた。


「まさか!」

 ノイルが端末を操作すると、乗ってきた船からの信号が途絶えていた。


 脱出不可能の閉鎖空間。

 もはや、追う側も追われる側もなくなってしまったことを悟って、2人は戦慄せんりつした。

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