第29話 診療予約システム


 ある田舎の町に、1軒の病院がありました。


 これといって特徴のない平凡な病院でしたが、近くに他の病院がなく、そこそこ繁盛していました。


 しかし、現状に甘んじていてはダメだと思った院長は、ITによる効率化を決意。さっそく知人のシステムエンジニアに相談しました。


 数日後、彼はいくつかの提案を持って病院を訪れました。

 院長はその中から、インターネットを使った診療予約システムに興味を持ちました。


 患者の多くはお年寄りです。

 長話を好む方や、耳の遠い方も多く、電話での応対にはとても時間がかかっていたのです。看護師や事務員の負担軽減は病院の課題の一つでした。


 それに、昼夜を問わず診療予約ができるのは魅力的です。

 高額な出費が必要でしたが、院長は迷わず開発を依頼しました。


 その帰り際、知人のシステムエンジニアは、老人たちで埋め尽くされた待合室を通りかかり、ふとつぶやきました。


「ところで、この予約システム誰が使うんだ?」

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