第27話 一騎当千の男


 ある会社に、とても働き者の男がいました。


 男は、自分が他人よりも劣っていると考えていました。

 ですから、誰よりも早く出社し、誰よりも遅くまで働きました。


 その努力は実り、男は優秀な営業成績をおさめるようになりました。

 性格も誠実で素直。

 取引先からも好かれ、社内からも一目置かれるようになり、男はますます仕事に励みました。


 社長は、そんな男を心配して、有給休暇を消化するように指示し、体調が悪そうに見えれば無理にでも早退させました。


 しかし、とうとう彼は過労から倒れてしまいました。


 そのせいで、会社は5人の社員を中途採用することになりました。しかし社長は、早く元気になって会社に戻ってきてほしいと言い、男の机を残すことを約束しました。


 男は、感謝の涙を流しました。

 ですが、社長としては当然のことをしたまでです。


 なにしろ、男は1人分の給料で5人分働いてくれるのですから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る