第25話 たった1つのものさし


 感謝の気持ちを言える人は立派だ。

 相手の目をみて、はっきりと礼を言う。

 これだけのことさえ、できない者が多すぎる。


 例えば、近所に住む長男の嫁。

 これはダメだ。


 いくら叱っても、目をそらして軽く頭をさげるだけ。きちんと眼を見て、礼が言えないのだ。ことあるごとに私の世話を焼いてくれるが、どうせ下心で近付いてきたロクでもない奴に違いない。


 しかし、長女の夫。

 これは素晴らしい。


 やましいことなど何ひとつないのだろう。

 彼は私の目をしっかりと見て、大声ではっきりと礼が言える。今は仕事が上手くいかず、だいぶ彼にはお金を貸しているが、いずれ成功することだろう。



「ねえ、ちょっと奥さん、聞いてよ」

「なあに?」

「隣のお爺さん。年金を、みーんな義理の息子さんにあげちゃって大変らしいの。それで、長男のお嫁さんが面倒みてるんだけど、昨日も夜中に大声で怒鳴り散らして、大変だったのよー」

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