第20話 朝の風景


 いつもの時間に目を覚まし、あくびをして身体を伸ばす。


 彼女はまだ眠りの中だ。

 その寝顔は無防備で愛くるしく、ずっと見ていたいほど。

 だが、そうもいかない。

 今朝も、これから不毛な戦いがはじまるのだ。


 無駄と知りつつ、肩をゆらしてみる。

 もちろん、これくらいでは起きない。

 頬をぐいっと押してみる。

 むにゃむにゃと寝言を言うだけで、やっぱり起きない。


 起こすように頼まれているわけではない。

 ただ、あの決まった時間に鳴り出す、ピピピという音が大嫌いなのだ。

 叩き落しても鳴りやまないし、そうすると彼女にも怒られてしまう。

 

 なんとか、鳴り出す前に彼女を起こそうするのだが、いまだ成功した試しはない。

 そして今朝も、その音が鳴り出した。


 布団をかぶる彼女。

 放っておくと、こっちまで朝食抜きになる。

 それに、世話を焼いてくれる同居人の為になら、これくらいはしてやるべきだろう。


 仕方ないので、彼女の鼻にかじりついて鳴く。


 ニャー。

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