第19話 サンタクロースの正体


「サンタさんって、お父さんなんでしょ?」

 不意をつかれて、私はうまい言い訳が思いつかなかった。

「ぼく、見ちゃったんだ」

 幼い瞳が真剣にみつめてくる。


 私は覚悟を決めた。

 少し早い気もするが、気づいてしまったのなら仕方がない。息子も、これで1つまた真実を知って大人になるのだ。


「そうだよ。実はお父さんがサンタさんなんだ。でも、これはパパとおまえとの秘密にしてほしいんだ。いいかい?」

 膝を突いて視線をあわせる。

 息子はひどくまじめな顔で、大きくうなずいた。


 彼はこれから、秘密を持つという苦しさを知っていくことになる。

 それを思うと、その幼い心がなるべく痛まぬようにと願うしかない。


 そして、いつか息子も私のあとを継いでくれるのだろうか。

 夢を与える仕事とはいえ、それはあまりに過酷な旅なのである。


 クリスマス・イブ。

 私はトナカイにひかせたソリに乗り、仲間とともに長い旅にでる。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る