第15話 10回クイズ


「ポテトって10回言って」

「ポテト、ポテト、ポテト……」

「手紙を書いたら入れるのは?」

「ポスト?」

「ブーッ。答えは封筒でしたー」

 彼女はそう言って屈託くったくのない笑顔を見せた。


 梅雨もあけて、よく晴れた土曜の放課後。

 人気ひとけのなくなった教室で、好きな女の子と2人っきり。それで何をやっているかと言えば、あの懐かしい10回クイズである。


 部活が始まるまでの暇つぶし。そんな名目で、お昼を食べながら部活までの時間を一緒に過ごすようになった。


 そして季節はひとめぐりし、もうすぐ2回目の夏休み。

 僕はいまだに、その決定的な言葉を言うキッカケが作れずにいた。


「次はヒラヤマって10回言って」

「今度は、ピザって10回」

 次々と出題される10回クイズ。

 暑さも手伝ってか、少し頭がぼんやりとしてくる。


「これで最後ね。スキマって10回言って」

「スキマ、スキマ、スキマ……」

「じゃあ、私のことは?」

「す……」


 窓の外でセミがなきはじめた。

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