第14話 怪談話


 暑苦しい海辺の民宿。

 その1室で、泊り客が3人で怪談話にきょうじていた。


 あかりを消した部屋の中央に、火をともした3本のロウソク。

 これから順番に怪談を話し、終わったら1つその火を消すのだ。

 さながら百物語の演出である。


「百物語って、ロウソクの火を全部消すとどうなるんだっけ?」

「本物が出るんだよ」

「迷信だって。百個も怪談聞かされれば、誰だってそんな気になるだけさ」


 そして1人が話を終え、火が1つ消された。

 部屋がぐっと暗くなって、静寂の中で誰かがごくりと喉をならした。


 2人目、そして3人目がとうとう話を終える。

 最後の火が、ふっと吹き消され、部屋は暗闇くらやみに包まれる。


「へっ、なんとも……ねえじゃん」

「だな。期待して損した」

「俺は正直、ちょっと怖かったけどな」


「それなら、ここで俺が1つとっておきの話を聞かせてやるよ」

「いいねえ」

 3人の声がキレイにハモッた。

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