冒険者を生業としている登場人物が、各話ごとに入れ替わりながら物語を紡いでいくタイプの連作小説です。番外編として英雄たちの冒険も語られますが、ほとんどは地に足がついた、というより『ごく普通の』といった感じの冒険者たち。 生活感がある等身大のキャラクターとして活き活きと描かれており、各話ごとに視点が変わることもあって作品世界に奥行きを与えています。 いうなれば古き良きTRPGリプレイのような、どこか懐かしい冒険譚。 ファンタジー好きのあなたなら、きっとこの世界も魅力的に感じられるでしょう。
私的には、この作品の主人公は世界観そのものかな、と思います。“一般的な冒険者たちのあり方”を語り過ぎないところも、魅力のひとつ。やや淡々とした重めの文体ですが、それも世界の空気感を出すのに一役買っています。よく目にするファンタジーで省略されているものは何か。それを見てみたい方に、オススメです。
ゲームの一場面を見ているような感覚で始まる第1話。しかし、エピソードが進むにつれて、キャラクターたちの性格や人間関係、日常生活までが鮮やかに浮かび上がり、英雄というよりは等身大の彼らに親近感を抱かずにはいられなくなります。「日記帳」というスタイルで、物語の世界設定を少しずつさりげなく語っていく手法も、実に見事です。個人的には、冒険者たちが酒場で飲んでいる場面が妙にリアルで特に好きです。
センスのあるタイトルやコンセプトに惹かれて読んでみましたが、一話完結なのでちょっとした空いた時間に読みやすい!何より昔ながらのRPGの世界観というか空気感がいいですね。情景が浮かんでくるようです。
ファンタジーの世界で繰り広げられる冒険者たちの物語。 なのですが、冒険者たちの目的は基本的に眼前の依頼を達成すること。 物語としてのゴールが定められているわけではなく、 さらに特定の主人公がいるわけでもありませんから、 もしかしたらこの話で、このダンジョンで、彼らはとんでもない目に遭って彼らの物語は終わるかもしれない。 そんな緊張感があります。 その約束された結末がないところが、主人公たちと一緒に冒険をしている気分にさせてくれます。