第5話 ぼくの名はフウチ


ぼくの名は、風知という

フウチ、と読む


ぼくは森の番人ではない

気ままに暮らし、旅をするスナフキンでもない


まいにち街の学校に通っている学生だ


帰り道にはいつも玻璃の音*書房 で

庭のコリスと遊び

クウヘンさんと音楽を聴き

ミルクがいっぱいの珈琲と 午後を共に

柚子さんの作ってくれる よるごはんを食べる


訳あって二人は ぼくの保護者のような存在

ここで一緒に住もうと言ってくれているけれど

ぼくには ぼくがいるべき家がある

歩いて50秒だしね



柚子さんが「ほら、おんなじなまえ」といって

1冊の小冊子を貸してくれた


ぼくのことを 物語を紡ぐ少年と 柚子さんは呼ぶ

でもここのところ、何も書けない


ぼくは今は この森に住んでいることがうれしくて

ただそれだけで何も考えられず

そういう日々もあってもいいのかなと思っている


でもいつか、旅に出る自分を知っているんだ

風が吹くと、誰かが呼ぶ声が 聴こえる






*今日の1冊 「fu-chi」

 こちらは漢字で書くと風致

 特集は 猪熊弦一郎の世界と CAFE*SHOZO




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