第4話 太陽のカイル、月の僕
クラフティ・クララベルの カイルは
ぼくと同じクラスに転校してきた
彼はひとなつこい性格で
あっという間にクラスに解け込み
ずっと前からこの場所にいる ぼくなんかより
もっと前からここにいるみたいだった
彼はスポーツが得意な 太陽のように目立つ存在で
みんなに囲まれて、よく笑っていた
そして時々
ぼくに向かって 鋭い視線を投げているように、見えた
*
いつの時代も ぼくには特別なともだちはいなかった
クラスの誰とでも話すけど 誰にも気を許してはいない
昔からそうだった気もするし
両親がいなくなってから 取り扱い注意になったぼくに
周囲が気を使い過ぎた結果なのかもしれない
きっとぼくは、同じ年の連中を どこか心の奥で
蔑んでいるような嫌な部分があるんだ
ぼくは、君たちとは ちがう
何がちがうかもわからないままに
そんな風に、自分と他者に線を引いていた
ぼくは走るのは速かったけど
団体競技、特に球技が苦手だった
一度 バスケットの試合で 誰にパスしていいかわからないまま
一人でドリブルシュートまで決めてしまった時
周りは喜んでいたけど チームメートはしらっとしていた
それ以来、キーパーのいる競技ならキーパー
いない場合は、ディフェンス守り側にいるようにした
カイルはサッカーやハンドボールで、絶妙なパスを出す
見ていて気持ちがいいほどに、相手を生かす
ぼくには到底できないこと
*
なぜ 気になるのだろう
あまりにタイプがちがう 似ても似つかない ぼくらの距離
なぜ 視界に入ってくるのだろう
あの透き通る瞳の色が ぼくに何かを伝えてくる
彼が 太陽ならば、ぼくは 月
しかも 青白く、冷たい 欠けた月
手鏡のようなまるい月を床に落したら
パリンと音を立てて割れた
残ったのは、ただの尖った欠片
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます