第25話 林檎の救出パーティ #2
ぼくの前に ジャムの瓶が並んでいる
何も入ってない時の瓶も 光を通してすきだけど
果実が入って表情を持った途端、もっといいなと想う
ぼくのいちばんは 赤い実のラズベリー
2ばんめは マーマレード 皮が少しだけ苦いのが理想
そして3ばんめの 林檎ジャム 世界でいちばんやさしいジャム
綺麗なピンク色のジャムを あたたかいうちに口に入れる
ぼくとコリスがむいた皮は、コンポート用の鍋に一緒に入って
うす桃の色がそっとつくのを待つ
この自然の色は、雪の中に立つ誰かの頬のようだ
*
さあ、今夜は林檎パーティ
乾杯する頃、雪を肩にのせたクウヘンさんが戻ってきた
何ヶ月か振りに薪をたくさん割って、上気した顔をして
メインディッシュは 林檎入りポークシチュウ
これは柚子さんの力作で
ぼくとクウヘンさんとコリスは 何度もおかわりをした
デザートは
アップルパイをひっくり返したような タルトタタン
ふわふわ淡雪がのったような シブースト
まるごと焼いて飴をかけた ベークド林檎
林檎にスパイスコンポート バニラアイスのっけ
おそるおそるぼくは 林檎のタルトタタンに
フォークをさして、驚いた !
あっというまに、ほろりと崩れたから
ぼくは犬歯を思い切り使って、噛みつく準備をしていたので
そのやわらかさに拍子抜けしてしまった
こんなにふんわりとした砂糖さんのお菓子は はじめてだった
心なしか今日は、上機嫌でやさしげだ
*
体中が甘酸っぱくなりそうな 夜だった
紅茶を一口飲んだ時、砂糖さんが言った
この春に 北の国へ行くことになりました
夫が一緒に暮らそうと言って来ましたので
ぼくは思わず、えっと大声を上げてしまった
粉雪さんが 遠くに 行ってしまう
* 今日の1冊 「森のキャセロール * 薪ストーブのおいしい魔法」
おいしいおいしい森のごちそうがいっぱい
各国に在住経験のある ステンシル作家 ホークスみよしさんの森の生活
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