第24話 林檎の救出パーティ #1
ぼくは 何度も家と書房を往復して
傷んでしまう前に 救出すべき林檎たちを運んでいた
時々転がしそうになった林檎は コリスが救出した
さて、玻璃の音*書房では、山のような林檎をどうするか
柚子さんが紙に書きながら 考え込んでいた
そして、お隣の砂糖さんの店に 救援をお願いに出かけた
*
お隣の「砂糖屋」は、お菓子屋であり、砂糖も売っている店だ
砂糖って たくさんの種類があるんだね
上白糖、 三温糖、 白双糖、 グラニュウ糖
氷砂糖、 角砂糖、 黒砂糖、 それに和三盆
砂糖さんは、純和風、ひっつめ髪のきつい顔立ちの女の人だ
娘の ふわふわメレンゲのような粉雪さんとは 正反対
女手一つで育ててきたから 仕方がないかな
砂糖さんのお菓子は 彼女そっくりで
ちょっとやそっとでは歯が立たない 羊羹とか
すみをさわると手が切れそうな カステラとか
かちかちで 林檎くらい大きい 金平糖とか
おいしいけど、ちょっと困ったお菓子が並んでいる
*
林檎の皮むきを コリスと競争した
競ったのは速さではなく、一本をどこまでつなげられるかの長さ
徐々に重くなって、今にも切れそうな赤い切れ端
ナイフで剥いてみる時、ぼくは本当はもっとワイルドに
丸い形など無視して、削るように切り裂いて
ナイフから直接口にしてみたいという衝動にかられた
実際にやったら、男らしいのか血だらけなのか わからないけど
いつだって やってみはしないのだ
こうしてぼくという男は、どこかいつも空想の中だ
赤いままの林檎を齧ってもよかったのに
*
お店を閉めてから 砂糖さんがやってきて
林檎のお菓子をたくさん作り始めた
もちろん砂糖さんの娘、粉雪さんも一緒にやってきた
ぼくはコリスと 久しぶりに火の入った薪ストーブのそばで
そんな光景を見ていた
柚子さんと粉雪さんが一緒に笑っている姿は
まぶしすぎて、ぼくはまともに見ていることができなかった
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