第4章 雨の降る午後

第16話 風が通る本棚


柚子さんの住まいの方の本棚は

玻璃の音*書房と 同じ本が並んでいるのに

まるでちがうようにみえる


ぼくは庭にでて、外からそっと眺めてみる

それは 光のせいなのかもしれない


夕方の碧の景色

斜めに射し込んだ光は、すべてを変えてみせる


柚子さんが冬になって模様替えした本棚は

あわいブルー とくすんだグリーンがふえていて

うすいオーガンジーのリボンの束のよう


見たことはないけれど

どこか遠く 寒い国のオーロラを思わせる



 魔法使いがひとふりした杖の先から ふりそそぐ光

 誰かがこちらに向かって来る


 さあ、迎えに来たよ

 これに乗って 空の階段を上り 逢いたい人のもとへお行き



待って 消えないで ぼくを おいていかないで


ぼくの涙をのせた風は 本棚を通って

古い空気の精をのせ、またどこかへ旅だってゆく



*今日の1冊 「オーロラの本」 田中 達也 * 写真+著

 神秘の世界 オーロラの写真集 科学的な話や民話も載ってる

 いつかは見てみたい どこかの国で エスキモーのような服を着て




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