第15話 どんぐり ころころ


玻璃の音*書房の本棚は

色彩で並べられている

一列全部がひとつの色というのではなく

おおざっぱなパッチワークのように


本の背表紙の色で 柚子さんが遊んでいるのだ

ここに来るお客さんは そんな並び方を楽しんでいる

目的の本は 柚子さんに聞けば出てくるしね


  時に本たちの色は 窓に映った影と共にゆれる

  薄衣の大きなベールとなって 空間を包み込む


コリスは 朝から

例の帽子付きどんぐりたちを

本の色にコーディネートして 書棚に飾っていた

オレンジコーナー にクリームサンドのどんぐり という具合に


でも、お客さんが本を手に取るたびに

ちいさなどんぐりたちは コロコロ転がってしまって

とうとう1日中 拾ってはもとに置いてを 繰り返したので


コリスは 夕方になって

柚子さんの書棚 の方にどんぐりの引っ越しをした

ここなら読むのは 柚子さんとクウヘンさんとぼくだけだから

ちゃんとどんぐりを脇においてから本を取る


1日中 働いたコリスは

ちょっと疲れてしまって、縁側でうとうとしていた


ふとみると コリスの帽子が小さくなっていた

頭に入らなくなって、ちょこんと上にのっていた

洗ったらちぢんでしまったんだって


そうか、その手があった!

ぼくはまだ 冬をゆっくり楽しめそうだ



ティーコゼーの話は これで、おわり*




*今日の1冊 「木の実とともだち」 松岡達英*編 下田智美*絵

 かわいいどんぐりや木の実が勢ぞろい

 図鑑のような 絵本のような あこがれの1冊

 親戚に 苺 海辺 草花 のともだちがいる



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る