第14話 黒いマフラー
ぼくは毎朝、毛糸の帽子をかぶって登校する
玻璃の音*書房を通り過ぎるまでのあいだ
帰りも書房が近くなると、そっと取り出す毎日
*
ある日、森の奥に向かって
三脚を担いで歩く クウヘンさんを見かけた
クウヘンさんが撮る写真は 白と黒のモノクローム
森の中に分け入り フィルムカメラで光と影の表情を切り取る
シャッターを押す 硬質な音が響く
まるで今どこにいるか 知らせるように
フィルムを巻く音が 答えのようにさえずる
きっと柚子さんが編んだのだ
近くで見たらばらばらの編み目だろうけど
ちょっと男っぽくて羨ましかった
クウヘンさんには、黒やグレーが似合う
時々はやす髭も わりと似合う
ぼくには、毛糸の帽子 しかもクリーム色
てっぺんにはボンボンまで ついてる
やっぱり柚子さんは、ぼくをこどもだと思っているんだ
心にチクンと穴があいた
*今日の1冊 森山大道 「 写真との対話 」
クウヘンさんの愛読書 *下記は著者の言葉
写真は光と時間の化石である
カメラを介して世界に語りかけ、撮る行為を通して世界が語る言葉を聞く
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