第13話 ありがた迷惑なプレゼント


ぼくの予感は あたった


放課後、いつものように 玻璃の音*書房によると

柚子さんが奥から手招きをしていた

はい、これ、あったかいよ


ぼくはプレゼントをもらった瞬間

試験勉強があるから、と逃げるように家に帰った


あら、いつもここで勉強するのに

という柚子さんの声が追いかけてきたが

ぼくは 一目散に走った


包みをあけてみると、やはり毛糸の帽子

ぼくにもティーコゼー いや、帽子がきたのだ


ぼくはもう少年と呼ばれるのは似合わない

まだ青年と呼ばれるほど大人じゃない

だけど、毛糸の帽子なんかかぶりたくない


でも、もしかぶってないと

柚子さんは、ぼくの頭のてっぺんをみて

ちょっとさみしい顔をするだろう

それは いやだ


  少年イングマルは想った

  人工衛星スプートニク号に乗せられて

  地球最初の宇宙旅行者になった

  あの悲しいライカ犬の運命を思えば

  どんな事だってたいしたことはない


あの犬は 青い地球を見たのだろうか

何を思って 見つめたのだろうか


ぼくの悩みなんて、かけらより小さすぎる

誰かとくらべて 自分がましだなんて考えはきらいだけど


ああ、柚子さんの親切は時々困る

あなたは ぼくの母親じゃないんだよ

早く 春が来るのを祈るしかない



*今日の1本「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」ラッセ・ハルストレム監督 

 1950年代の スウェーデンを舞台にした映画

 少年イングマルが 田舎暮らしの中で出逢った女の子

 サガ(男の子みたい!)との ほんのり淡いお話




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