第12話 どんぐりのクリームサンド

冬なのに、柚子さんの庭には

ひだまりができて、ふんわりあたたかい


ぼくはまだ冬休みなので

一日中 玻璃の音*書房で過ごしている


コリスは 縁側にちょんと座っていた


彼のなかまたちは みんな冬眠に入ったので

すこし淋しそうに 小さくみえた

コリスは あたたかい柚子さん家にいるので 冬ごもりの必要がない

おいしいごはんを食べて、いつもより寝るのが長いだけ


今日は、笠がとれてしまった どんぐりたちに

もとの笠をつけようとフントウ していた

まるで貝あわせのように ぴったりのものを探す


そして キッチンから色とりどりのクリームを準備してきて

ひとつひとつ くっつけていった


それは チョコレート色や オレンジ色

空色や カスタードクリーム色や 苺色で

それを 接着剤代わりにして笠をそっとのせた

なめてみると ちゃんとおいしかった


すこし はみだしたクリームが 笠帽子のフチのよう


いろいろな色を混ぜてしまうと 土色にもどってしまうよ

だんだん悪ふざけしている 小学生のようなコリスに話しかける


応答がないのでボウルを覗いたら 溺れていた

しっぽをつまんで持ち上げたら

折角いい気持ちだったのにと言いたげに 歯をむいていた

まるでこどもだね



夕方、風が冷たくなると

おもむろにコリスが 手編みの毛糸の帽子をかぶった

どこかでみた柄だった

あ、ティーコゼーとわかったけど やはり形がゆがんでいた


でも コリスはちょっと嬉しそうだったので

よく似合うねと言った

言ったあとで、ぼくは いやな予感がした




*今日の1冊

 「くまのこミンのふゆじたく」 あいはらひろゆき文 あだちなみ絵 

 くまのこミンの お父さんお母さんは お仕事 

 2人の兄とミンだけでお留守番 サンタさんがこわいミン 

 ね、プレゼントはなあに



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