第3章 ティーコゼーの話
第11話 紅茶ポットの帽子
玻璃の音*書房に 新しい本を仕入れた日
柚子さんは ぼくを住まいの方に手招きして
林檎ジャムを入れた アッサムティーを入れてくれる
そして、友人を紹介するように どんな本がやってきたか
ひとつひとつに言葉を添える
今日のお気に入りは「Room talk」だって
なつかしいようなザーっとした風景
冬の動物園 ペンキを塗った椅子
写真のくすんだ感じが なんとなくいい
柚子さんは 硬派なものも読むくせに 少女趣味もすき
あなたの気持ちはあちこちに飛ぶ
ぼくは考えてる
この世のはじまりには童話があって ずっと霧がかかっている
晴れた先には 分かれ道が幾つもあって
たくさんの話に枝分かれしていく
童話の主人公たちは感情を持たない
感情を持たない主人公の代わりに
ぼくらが想像の色を添える なんてね
冷酷のまま突き詰めると ある種のファンタジーになる
少女趣味は王道かもしれない
*
紅茶のポットに みなれない毛糸の帽子が かぶせてあった
ティーコゼーっていうのよ
紅茶を冷まさないようにね
ふうん、ちょっと形がいびつだね
*今日の1冊 岡尾美代子「 Room talk 」
まだ起きたくない寝床で ゆっくり眺めたい1冊
ちょっと旅行気分 ついてくる栞がかわいい
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