第7話 苺のロールケーキ


ぼくは 柚子*書房に 本を返しに行った

庭から入ると、パタパタ音がしていた

見ると、柚子さんが ふとんをぐるぐる巻いていた

中では コリスが目を回していた


朝から何してるんですか、と聞くと

イメージトレーニングよ と柚子さんは答えた



学校が終わってから 玻璃の音*書房に行くと

キッチンからいい匂いがしていた


柚子さんは クリスマスディナーの準備中

今日はロシア式 ね

香ばしい カラっとピロシキ

サワークリームが ぽてっとボルシチ 

匂いにとろけそうな クリームシチュウの きのこパンのっけ


そしてデザートは 苺のロールケーキ

朝、これを練習していたんだって


  ロールケーキは 真円じゃなく楕円形

  宇宙の銀河も 地球の軌道も みんな楕円なんだ


一口食べたら 目がぐるぐるまわった


どうしてだろう

ロールケーキの ぐるぐるのせい?


見ると コリスも目を回していた


クウヘンさんが

あ、ウォッカ入れすぎちゃったかなと

ロシアンティーのジャムを舐めていた



ここで みんなの 「ぐるぐる経験談」がはじまった


ぼくは ジェットコースターが苦手な話

こわくて どうしても目を閉じてしまうから

余計に たてやよこのぐるぐるが 大きくなっちゃうんだ


柚子さんは スキーで 斜面を上から下まで転がった時

笑っちゃうくらいに 目がぐるぐる回って

下に着いた途端 ほんとうに目から星が出たという話


クウヘンさんは 酔っぱらって目を閉じると

ぐるぐるがやってきて

そこで負けずに目を開けると大丈夫だけど

目を閉じたまま この世に身をまかせていると

ぐるぐるに吸い込まれて 奈落の底に落ちていってしまう話


ぼくのクリスマスは、ひとりぼっちじゃない






*今日の1冊 「プレゼントしたいロールケーキ」小山律子著

 基本のカスタードロール そしてブッシュ・ド・ノエルまで

 和のゆずロールもあり 目を回さないように小注意 **




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