七人目~佐野慎太郎~

■たぶんね、彼は爆発しそうになっていますよ。


○それは、一緒に働いていた時にも感じていましたか?


■彼は…いつもビクビクしていましたね…そりゃそうでしょう。八坂さんは凄く良い人で…過去の事を聞かない人だけど…パートのおばちゃんとかはこそこそ喋っていたりしますからね。

僕も結構影で言われていましたよ…いや…犯罪者ですし…全部自分が悪いので…なんて言うか…何を言っても言い訳になってしまいそうですが…


○なるほど…でも、びっくりしました。私が工場を出た時からついてきたいたのですか?


■いや、なんだか…社長室から穏やかじゃない感じの声が聞こえてきて…僕も彼の事を気にしていて…なんて言うか…僕、今は工場のレーンを任せてもらっているのですけど…僕も以前人を…殺してしまって…


○ああ…あの…


■八坂さん言ってました?


○いえ、良い感じで言ってましたよ。今レーンを任せている人は更生して本当に真面目に頑張っているって。


■やっぱり自慢げにそう言ってました?


○…?はい…そうですね。八坂さんからしたら…自慢だと思いますよ。


■そっか…相変わらず…あの人はズレてるな…


○ズレてる?


■はい。なんて言うか…更生して真面目に頑張っているって感動秘話みたいに話してるでしょうけど…実は感動でもなんでも無いんですよね。そう言う風にしか生きる道が無いんです。

僕、事件を起こしてしまった時…かなり酒を飲んじゃっていて…それで…その時一緒に居た彼女につまんねえいたずらしてきた酔っ払いを…やっちゃって…その時、一人は逃げたんですけど…そいつが落とした財布があったから…中を見て…三日後殺しに行っちゃったんですよね…

今思うと、その人殺さなくて良かったなと思います…でも怖かったんですよね。僕が人を殺したって知っている人間がそこにいると…


○………


■僕ら、いや、被害者の方が居て…それで僕らは生きている訳じゃないですか?それが…正直申し訳ないって部分があるんですよね…何も考えなくて良いかも知れない。償ったんだからって八坂さんは言ってくれるけど…僕が殺した人の人生って…僕の十年位の意味しかなかったのかなって思ってしまって…あ…なんだかこんな話しで引き止めてしまったみたいで申し訳ないです…

なんだか…彼の友達なのかって思ったら…少し話したくなって…彼は…うまくやっていけているんですか?


○それを確認しに行こうと思っています。八坂さんのお話しでは彼女と暮らしたくてもあの工場の給料ではきついから辞めたと仰ってましたね。


■そうですね。正直きついと思います。一人だったら…それなりに暮らしていくことができますが…養っていくとなると…でも、彼は…うーん…彼女って…ちょっと…びっくりですね…


○びっくり?


■はい。僕は彼と仕事以外でも話をしていたんですよ。僕が先輩と言うのもあるし…同じ傷がありますし…でも…彼…本当なのかなって思いますね…


○本当?本当とは?


■彼が辞めたの少し前で…なんて言うか…何も変わらなかったんですよね。あの工場には長くは勤めてないですが…その間…ずっと静かで…何かに怯えているような…でも…何か強い意思がある目をしていました…

最初は真面目に頑張っていこうかなと、そんな風に見えたのですが…なんて言うか…同じ…あの…変なこと言いますよ?同じ…人殺しとして…何かわかるんですよね…彼…何かしようとしているんじゃないのかなって思って…

いや、彼が起こした事件が事件だから、ちょっと考えすぎてしまっているのかもしれないです。先入観って言うのもあるのかもしれないです。でも…何か…やろうとしているんじゃないのかなって…辞めてからも噂はぼちぼち来るんですよね…人を殺す準備をしているとか…動物を殺して練習しているとか…

そんなことない!って言ってあげたいんですけど…なんて言うか…もしかして…みたいな感情が生まれて何も言えなくなるんですよね。


○今回…私を引き止めたのはそういう話がしたかったんですか?なんでもお聞きしますよ。


■そういう訳でも無いのですが…なんて言うか…僕ら、話せないんですよ。誰にも昔の事とか話せないし…今後結婚とかしても嫁や子供に話せないじゃないですか…僕も結婚しようとしているんですよ。彼女は…僕の過去を知ってくれた上で一緒になってくれるって言っているのですが…その…自分が親なら…人殺しに自分の娘をあげたいって思えますか…?


○………難しい話ですね。でも、あなたは、佐野さんはマジメにやってるじゃないですか。役職にも付いているし。


■いや…彼が心配なのはね…自分の事があったからで…同じ立場として…彼女との事…忠告もしたんですよ。じゃあ…あの…


○大丈夫です。言ってください。


■「いっそのこと、彼女の親が死んでたら…こんな事で悩まなくて良いですよね…」って言ってて…いや、冗談だったわかるんですよ。僕らだってブラックジョークは言います。そのくらいは…許して欲しいです。でも…今までそんなジョーク言わなかったんですよ。

人間…初めての彼女ってちょっと…性格が変わってしまう部分あるじゃないですか?それを感じて…もしかしたら…彼女ができた事で…自分が置かれている状況とか…わからなくなってしまっているんじゃないのかなって心配になってしまって…僕ら…人並みに幸せになって良いと思いますか?


○…それは…自分で決める事じゃないですか?僕は被害者でも無いし…一概にどうとは言えないです…申し訳ない…


■困らせてしまって申し訳ないです。でも…幸せになってはいけないと思っています…それは僕たちの思い込みかも知れないのですが…


○その思いは…贖罪ですか?


■それもあります…でも、凄く恥ずかしいのですが…自分の気持ちです…怖いんです。もし幸せな家庭を作る事ができて、子供も生まれたとして…誰かがその事件の事を家族に言わないか?とか…周りの人は知っているんじゃないか?とか…

子供が…いじめられやしないかと…考えてしまうんです…でも、そうなるのは当然だと思っています。僕は人の命を奪いました。だから…苦しまないといけない…でも…僕の近くにいると言うだけで…皆が苦しまないといけないのかとか…考えてしまうんです。本当に自分勝手だと思います。だったら一人でのたれ死ぬべきなんです…でも…それもできないであの工場で働いて…それで…彼女と結婚とか…殺してしまった人が送れなかった幸せへ向かおうとしている…そんな自分が許せない思いもあります…彼は…それに耐えられると思いますか?不安なんです。僕はもしかしたら彼を見捨ててしまったんじゃないかと。それで…あの…彼の友達?なんですよね…?その…あの教団を作った…?あの…あなたに聞いて欲しくて…そして…


○なんでしょうか。


■彼を止めて欲しい。もし何か早まった事を考えているのなら…止めて欲しい…もう殺しているなら…新聞とかにも出るでしょうから…だから…もし出会って…話す事があれば止めていただけませんか?


○…もちろん。もちろん止めますよ。どんな手を使ってでも。


■ありがとうございます。本当に…いきなり勝手なお願い申し訳ないです。


○いえいえ…どうせ…会いに行くのですから…少し彼との事を聞かせてもらって良いですか?


■はい。話せる範囲であれば。


○最初…彼が施設から出てきて…働き始めた時はどんな感じでした?


■…そうですね…やはり…事件でしたね。いつも…ただ普通に新しい人が増えるだけなんですよ。パートの方もそう言うのは慣れているし、僕らが過去に何かとあったことも知っているんです。でも…やはりざわつきましたね…僕らには聞こえない所で「あいつだけは受け入れるな」とか…色々あったと聞いています。それで…何人か辞められたのも見てきました。

八坂さんの思いや気持ちがあったのでしょうね…「彼も人間だ。私達が受け入れないと誰が受け入れるんだ」って…涙ながらに社員やパートさんを説得したって聞きました。嬉しかったですね。僕ら…僕らって近くに置いておきたくないじゃないですか。そんな僕らを本当に思ってくれているんだなって感じました。

それで、彼が来た時もさらっと「彼ね、新人さん。仲良くしてあげてね」って…僕が教育係と言うか…色々と最初に教えたのですが…なんて言うか…真面目ではあるんですけど、心はそこに無いような…抜け殻みたいな感じでしたね。


○何か感じましたか?言葉は悪いですが…犯罪者らしオーラというか…


■いえ…感じなかったですね。でも…なんて言うか…諦め…?そう、諦めている。何か…この世界を諦めているみたいな雰囲気でした。でも、それはわかるんです。僕もいきなり社会に放り出されて…どう生きたら良いのかわかりませんでしたから。施設では社会復帰の為に洗濯とか…買い物の練習とかもするんです…なんだか馬鹿にされているみたいな感じでした…でも…それをやっていて良かったと思えましたね…

そして…実感するんです「ああ、これからあの施設の中に居た時よりも長い時間をここで過ごさないといけない」って…それに…


○それに…?


■「もう誰も守ってくれない」って…実感するんです…変な話ですよね。犯罪者は施設にいると…例えば刑務所も同じだと思うのですが…守られているんです…だって施設や刑務所のルールに従えば評価されるし、やる事は無限に与えてくれるんです。

施設とかで辛かった時間って…今思い返したら自由時間なんですよね。自由時間…皮肉な言葉ですよね。施設の中で自由なんて無いのに自由時間なんですよ。そりゃ気の抜ける時間はありますけど…一部の完全にブッ壊れて…罪の意識が無い人間以外は…その自由な時間は事件を起こした瞬間と、なぜそこにたどり着いたかの悔恨と、被害者への何とも言えない気持ちで…一番自分自身が無くなってしまいそうな…一番不自由な時間を感じるんです。


○今、「何とも言えない気持ち」とおっしゃられましたね?それは…どう言う…いや、何とも言えないのはわかりますが、何か当てはめるとどんな気持ちですか?


■なんだろう…そうだな…悪いって言う気持ちはあるんですけど…一番は…「こんな所でこんな事していて意味があるのか」って事かも知れないですね…そりゃ周りの先生とか…多くの人は「更生することが償いだ」って言ってくれるんです…でも起こってしまった事…それは変わらないし…たとえ遺族が許してくれたとしても、出来事って何も変わらないじゃないですか。

彼からも…そう言うのを感じたんですよね…そう言うのを。向き合おうとするとずれるんですよ。何かがずれていくんですよ。起こした出来事と通り過ぎていく出来事がどんどんずれてきて…そこに立っているのに…立っていないような…そんな気持ちになるんです…

彼は最後までそんな感じでした。彼は…本当に…ここから先、生きていけるのか心配なんです。

失礼な話ですけど、あんな弱そうで…何もできなそうな犯罪者いないですよ。あんな弱そうで…教えた事以外…ルールに則った行動以外できない人間…どうやってこの自由な世界で生きていけるのか…

彼は…自分で決める事を放棄しているんだと思う。自分で決めると言う事を極端に恐れているんだと思う。それは誰だって同じだし、誰だって怖い。何かを教えても「次は何をしたら…」って聞くだけでした。「と言う事はこうですか?」が一度も無かったんです。

正直施設で生きるには…それが一番手っ取り早いんです。そうしていれば何事も進む。でも…この世界では…自由な世界では…駄目なんだと思う…僕は…無理やり、なんとかして…それに…多分彼よりは頭が悪いから…適応できました。


○自由が…何よりの監獄なのですか?


■自由は自由を縛るんです。自由でいよう。自由でいたいって思いが心も体も縛るんです。この世界で、犯罪者の僕たちが、人殺しの僕たちが、足かせが付いた僕たちは…どうやって生きていけば良いんでしょうかね。

そう思うのが当たり前って言うのはわかるんです。そういう毎日の辛さ、普通に戻れない辛さ。それを感じ続けて苦しむ事で…「ざまあみろ」って言われたいんです。そうしたら罰と言うルールの上にいられるから。

でも…みんな…この世界のみんなは優しすぎるんです…許されてしまうんです。許されて…自由の中に立った時…それが不自由でどうにも動けなくなるんです。

自由な時間なんて無いですね。ただ今目の前のある事をやっていくしかない。あ…なんだか申し訳ないです…自分の事ばかり話してしまって…彼の事で呼び止めたのに…


○いえいえ。良いんです。こんな言い方も悪いですけど…こんな話は他所では聞けないですしね。


■そう言ってくれてホッとしています。変に同情されるよりもよっぽど良いです。


○彼の事で聞きたいのですが…彼女ってどんな人ですか?


■僕も見たことが無いんですよ。そんな事は辞めるって話が出るまで知らなかったです。それで…彼も急に即日辞めたとかじゃなくて、そのあとも…一ヶ月ほどかな?働いていたんですよ。向こうは話しかけられたくないかも知れないですけど…色んな人にその事を聞かれて…あまり笑ったりしない奴でしたけど、その事を言われるとちょっと嬉しそうな顔はしていましたね。

僕も聞いてみたんですよ。彼女ってどんな人?って。じゃあ…照れた感じで笑って…「昔から…付き合いがあって…」みたいな感じでゴニョゴニョ言っていました。中学生の時に付き合っていた人が居たんですか?


○いや…私の知る限りでは居ないですね…そんな素振りも無かったですし…


■僕も色々聞きたくなって…やっぱり嬉しくて…普通って言うのが…どれだけ辛いって知っていても…一人じゃなくて…なんて言うか…成長じゃないですか?異性と付き合えるって。それを感じて…消化できない気持ちもあるんだろうけど…それでも進もうとしているのかなと思ったんです。それで興味もあったけど色々聞いて…

彼はあまり答えてくれませんでした。年下です…とは言っていましたけど、可愛い?とかそう言うのは曖昧な感じで答えて…もしかしたら、その曖昧な感じは…抵抗があったのかも知れないですね。普通に近づいているって事に、あんな事件を起こした人間が…さっきも言ったみたいに先の事を考えていたのかも知れない。今までは何があっても傷つくのは自分だけだったでしょうけど…恋人ができて…一人じゃなくなったら…普通じゃない自分は抱きかかえる事ができても、周りにいるのは普通の人ですからね…世間からしたら攻撃できる対象が増えるでしょうし…

本当に勝手ですよね…被害者の方に殴られたり、何かやられるのは耐えられると思います。悪いのはこちら側ですから…でも…全く関係が無い第三者が…正義を振りかざすと言うか…それが当然なのかもしれないですけど…納得できるのかと言われたら納得はできないんですよね…

あんたら関係ないじゃないかって…でも…不特定多数の人に恐怖感を与えたって事実もある訳で…

もう僕は人を殺してからかなりの年月が経ちました。それでも納得しきれないって不思議ですよね。何人もの人生を変え、二人の人生を止めて、自分の人生を迷わせる。犯罪なんてやるもんじゃないですね。

そしてそういう人とは逆の人もいる。逆の人は…善意でやってる分…余計に…


○八坂さんみたいな?


■誤解していただきたくないのは…僕は八坂さんに感謝しています。僕以外にも…同じような仲間もみんな感謝しているはずです。それに彼も…困惑しながらも感謝しているんです。でも…八坂さん…いつも僕たちを優しい目で見つめているんですけど…それと同時に睨んでいるような気がして…


○どういう事ですか?


■プレッシャーがあると言うか、そう言うのは素晴らしい事なんですけど。やはり期待の裏返しなんでしょうし。期待されていることは本当に嬉しいんです。でも、そこにはルールが生まれて…そのルールに沿って生きている限りは安全なのですけど…一歩外れると…何をどうしていいのかわからなくて…僕も彼女との事があるからもっともっとお金が欲しい。お金が稼げる仕事がしたい。

でも…あの工場から出てやっていけるとは思えないんです。

ルールが整然と並んでいるからこそ、そのルールに従って、ルールの中でやっと自由を謳歌できる。そんな状態じゃないのかなと思ってしまって…あの目の奥に何があるんだろうって思ってしまうんです。

人の目って不思議なんですよね。その奥にある気持ちがわかる。それで…あの…これは話している内に気になってしまったのですけど…あの…怒らないでくださいね?


○なんでしょうか?


■あなたは…彼を…あの…殺そうとしていませんか?


○…………


■気分を悪くしたのなら申し訳ないです。でも…なんだか…僕の話を聞いてくれているあなたを見ていると…一人目を殺してから…二人目を殺すまでの間の僕の目に似ているんです。

なんだろう…何かを決めている…それに…あの…


○…言ってください。


■僕らと同じ側の目をしているなって…


○………


■…………


○……………


■………………


○…………………。なるほど。そう見えますか。


■本当に申し訳ないです。変なことを言ってしまって。何となくですから。それに、僕はカンが利かないって彼女にいつも怒られるような人間なので本当に気にしないでください。


○いえいえ…良いんです。私も…彼と同じ側かもしれない。私が止めていれば。何もしなかったからあの事件は起きた。そう思っています。


■そんな事無いです。犯罪って…あの…犯罪って勢いなんです!僕も勢いでした!だから…その勢い…一瞬に押し寄せてくる波が来なければ…大丈夫です。


○一瞬で押し寄せる波…


■そう…波なんです。押し寄せてくる波。その波に…全てが流されてしまう。被害者の人生も、僕の人生も。

その波を乗りこなせるのは…ちょっとおかしな人だけです。ほとんどの人間は流されてしまう。


○流される…


■本当に色々と申し訳ないです。ちょっと…変ですよね…あの、彼が見つかったら「応援してる」って伝えてください。今日は本当にごめんなさい。


○いえ、良いんです。こちらこそありがとうございます。あの…最後に一つ良いですか?


■はい。なんでしょうか。


○彼は悪いと思いますか?


■…悪い。悪いです。理由は必要ないと思います。人を殺す奴はバカで最悪です。でも…


○でも?


■そのバカは…伝染するんです。近づけば近づくほど。触れれば触れるほど。


○…


■そして…感染したバカは…もっと悪い。そう思っています。


○………ありがとうございました。


~メモ~

どうしてみんな邪魔をするんだ。

ちくしょう。もっと世界が絶望で満たされていたら。もっと悪意で満たされていれば。


世界は優しさと愛で埋め尽くされている。そんな世界で誰が呼吸できるんだ。

そんな世界で誰が生きていけるんだ。


田中は目の前だ。殺す。私は感染したバカなのかもしれない。もう毒は体を巡りきっていて私自身が猛毒になっているのかも知れない。


その毒を以てしても恐怖を止められない。


田中は悪い。人を殺したからだ。そんな奴が私の人生を脅かしてはならない。


あいつは今も人を殺そうとしている。彼女?擬態に決まっている。普通への擬態。


頼む。悪人であってくれ。極悪であってくれ。お前が悪魔でいてくれる限り僕は安らかに眠れるんだ。


怖い。


怖い。


怖い。


押し寄せてくる。


波が押し寄せてくる。圧力で迫ってくる。


会わなければ震えは止まらない。会わなければ何も止められない。会わなければ僕は生きられない。会わなければ何もはっきりしない。会わなければ真意を聞けない。会わなければわかりあえない。会わなければ落ち着かない。会わなければ納得できない。会わなければ遠ざかれない。会わなければ忘れられない。会わなければ普通に戻れない。会わなければ道を正せない。会わなければ心休まらない。会わなければやめられない。会わなければ誰かが知ってしまう。会わなければ彼を止められない。会わなければ僕は進めない。会わなければ光りは見えない。会わなければ道は開けない。会わなければ誰にも会えない。会わなければ正気に戻れない。会わなければ壊れてしまう。会わなければバラバラになってしまう。会わなければ全てが無駄になる。会わなければ夢にまで出てくる。会わなければ呼吸ができない。会わなければ何も正せない。会わなければ正義を立証できない。会わなければ怒られる。会わなければ泣いてしまう。会わなければ悲しくなる。会わなければきもちわるい。会わなければ笑えない。会わなければ泣けない。会わなければ苦しめない。会わなければ進めない。


会わなければ。


殺せない。

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