7時25分の君

@takayuka55

第1話

今日も毎度朝に弱い私です。

柚木 羽菜 高校1年生。いつも6時から5分ごとにスマホのアラームを設定しているはずなのに起きるのは6時40分。相変わらずママに

「なんで起こしてくれなかったの!!?」

と八つ当たり。

「起こしたけど起きなかったのが悪いんでしょ。」

毎回言われてもう聞き飽きましたって言葉。でも、ママが言ってることは正論なのですよね。こんなギリギリの自分にいつも呆れながらご飯はしっかり2杯頂いて、あ、お腹が空かないようにね。そして左手で歯ブラシを持ち歯磨き。右手ではコテを持って目までかかった前髪を巻く。そして準備完了かと思いきや、いつも準備を朝やるためバックには昨日の教科がはいっている。わかっているなら、前もって準備しよう?って、考えてるんだけど去年からずっと出来ないからもう今年は諦めた。そして、

「ママ、今何時!?」

「もう7時20分だよ。」

「うへ!?急がなきゃ!」

本当は駅まで徒歩7分かかるのだが、どうしても乗りたい電車があって全速力ダッシュで4分間で行く。そして着いたのは7時24分。電車が来るまで1分前。ホームに着くまでの階段で走って荒れた前髪を直して、靴下をしっかり上げて、リュックが空いてないかも確認。そして、ホームに着き見渡すと。今日もいる、彼が。いつも5号車の位置のホームの黄色い線ギリギリのところに立っていて、静かに佇んでいる彼。私は彼のために朝のこの時間を大切にする。名前も知らない、声も聞いたことがない。唯一わかるのはバックに書かれた祥瑞高校の文字とバスケットボールの絵。祥瑞高校は私の通う尚央高校とすごく離れている。だいたい一時間の差かもしれない。祥瑞高校は京王線からJR線に乗り換えなくてはいけない。学校も違う彼。だけど毎回見て気になって仕方がない。でも見ているだけで充分なのだ。彼の横をいつものように通り過ぎて私は6号車に。こんな朝のひと時がほんとうに幸せでかけがえの無いものだ。私は16年、彼氏がいない、まあ恋をしたことがないから。だからこの気持ちも恋かどうかなんてわからない。ただ、椅子に座り電車に揺られながらいつも考えるのは隣の車両の彼のこと。もやもやして仕方が無いのです。

狭間で降りる。彼とはここでお別れです。なんて、向こうからしたら知らない人だし、そもそも私のこと目に入っているわけがないと思う。

「羽菜〜!!おはよ!」

「おお!優おはよう!!」

彼女、守本優は同じクラスかつ親友みたいな子。狭間駅のすぐ近くに住んでいて、仲良くなった時に一緒に通うことを約束した。

「羽菜さん、羽菜さん!今日も会えましたかな??」

「それが聞いてくださいよ優さん、今日も会っちゃったんです!」

なんて言って、ふざけ合うのがもう毎日の朝の恒例。

「さすが7時25分の君だね。運命かよ!」

「運命なわけないじゃん。私が合わせてるだけなんだから。」

「あ、そっか羽菜がストーカーなのか!」

「はい、ストーカーって言わないで違うから!」

彼の名前を知らないからって、優があだ名を考えて彼を7時25分の君と呼んでいる。あだ名でもなんでもくて、そのまんまなんだけどね。優にとってはこれが一番わかりやすいから。ってことらしい。

「やばい、羽菜。あと15分しかない。」

「うそ!?そんなに遅かったか!じゃあ、全力ダッシュといきますか。」

「おっし、のりましたよ!」

優は女子テニス部に対して吹奏楽部の私。体力と運動神経の差は大きい。私の全力ダッシュは優の競歩並だと笑われたことがあったほど優には敵わない。

学校に着いたのは8時27分、朝のSHLが始まる3分前。ただ、もう先生が教室にいて「もう少し早く来いよー。」なんて言われ席に着く。みんなが早いのではないかと思うくらい、3組の人たちは私と優を残し全員座っていた。そういうところだけでは私のクラスは真面目なのだ。

SHLが終わり優にさっき伝えきれなかった今日の彼の報告。

「今日も彼は元気にやっていました!」

「もう、ほんとにストーカーかって!」

「ねえ、優。この気持ちはなんなのかな?」

「んー。羽菜の場合恋をしたことがないって言うのが難しい。恋をしたことがあればそれが恋なのかがすぐ分かるんだけどね。」

「優は恋だと思う?」

「私は実際今の彼氏に片思いしてた時は羽菜みたいな感じだったような気もするから恋、と思うけどそうは言いきれない。」

「え!?なんで!?」

「だって、恋のポイントなんて人それぞれだから。」

「恋のポイントか。それが要か。」

「まずはもう話しなさい。彼を知ろうとしなきゃ気づけないと思うよ?」

優の言うことにすごく悩む。そう、彼のことを知らなくてもやもやしてる気持ちもある。知りたいんだと思う。そうこうしてるうちに、時間はとっくに過ぎていて先生に「早く座れ!」って怒られてしまった。

1限は生物だったけど先生の話なんかもう全て右耳から左耳に抜けていく。問題も、いつも日にちで当てるから今日は回ってこない。だからこそ少し余裕でいた。頭の中にはさっき言われた優の言葉と彼の顔。おし、もう決めた!明日絶対話しかける。私はそう決意をしたと同時に、

「はい問2柚木。」

先生に当てられてしまった、いや、正しくいえば優に当てられた。優が今日当てられる日で、次の問題は誰が答えるか指名できるのでそれが私に回ってきたのだ。授業きいてなかった罰だっと優に口パクで言われ、私は先生にわかりませんと一言。

「さては、話を聞いてなかったな?じゃあこの問は宿題としてやってきなさい。」

と、先生に怒られた。今日は何回注意を受けることか。全部自分が悪いんだけどね。1限が終わったら優に何してくれたのよ!!と怒るのと、彼に明日話しかけるってことを伝えよう。

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