Extra edition(おまけ/時間軸はバラバラです)

……好きな人が、いたんでしょう?

「目をそらさないで」で始まって、「全部嘘だよ」で終わる物語

ウィル視点のお話です。


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「目をそらさないで、正直に答えて」


 眉尻を上げ、真正面に詰め寄られた。むっと唇を引き結んでいるから何かにご立腹なんだと思うけど、残念ながら心当たりがない。

 首を傾げるそぶりさえ刺激に繋がりそうで、とりあえずは彼女の言に従いまっすぐ見つめ返すことにする。少し上目遣いに見上げる様が本当に可愛いなと思っていたらアデレードはぱっと頬を染め、逆に目をそらされてしまった。残念。


「わ、わたしだって正直に話してくれたら、怒らないし。ウィルトールの方がいろいろ、経験してても、当然だと思うし……」

「一体なんの話?」


 さすがに首を傾げるとアデレードはぴたりと押し黙った。

 思い詰めた面持ちで一点を見つめたまま固まってしまったので、顔を覗きこみ彼女の視界に入るよう手を振ってみる。


「アディ?」

「……す」

「す?」

「……好きな人が、いたんでしょう? あの、結婚、考えるくらい……」

「結婚? 誰が……、え、俺?」

「でも相手の方には決められた婚約者がいらして、ウィルトールのお父さまも許してくださらなくて、駆け落ちも阻まれてしまって最後に会ったのは月が綺麗な夜……」

「なんだか聞き覚えがある話だけど……それ誰に聞いたの?」


 犯人の目星はついていたがあえて尋ねた。もはや確信があった。こういう、洒落にならない内容を吹きこむ人物はひとりしかいない。もちろんわかりやすくやってるんだろうけど、面白がって騙さないでほしいしアデレードも易々と騙されないでほしい。

 そもそも少し考えればおかしいと気づく話だ。展開が、ちまたで流行っているという恋愛小説そのものじゃないか。アデレードが珍しく読みこんでるなと思ったけどこうも気づかないものなのか。


 彼女は消え入りそうな声である名前を告げた。予想通りの答えについ溜息が漏れた。

 迷ったのは一瞬。言い切ってしまうとそれはそれで問題な気がするけどいちいち振り回されるのは勘弁してほしくて、あと彼女をからかう行為も少し腹立たしくて、結論を出した。




「今後、ファル兄さんの話は信じないでいい。全部嘘だよ」






――――――——————————――――


「目をそらさないで」で始まって、「全部嘘だよ」で終わる物語


診断メーカーで出したお題を元に書いたssでした。

「あなたに書いて欲しい物語2」

https://shindanmaker.com/828102

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