四. 世迷い言

 ねえねえ精霊さん。私のお話聞いてくれる?

 私と一緒に暮らしてた人たちはね、いつも私を怒鳴ったり避けたりして私のこと嫌ってたの。私もあんな人たちと一緒にいることがすごく嫌だった。でもね、私お母さんもお父さんもいないし、一人じゃ生きていけないから一緒にいるしかなかったのよ。

 しかもね、みんな私がお母さんたちをどっかにやっちゃったって言うのよ?そんなことできないって私が言っても全然聞いてくれないの。みんな嘘ついてるのよ。お母さんたちは潮に流されちゃっただけで、もうちょっとしたら絶対戻って来るんだから。精霊さんもそう思うでしょう?


 …ねえ、何か喋ってくれない…?


 私ね、今すごく幸せなの!いや、幸せっていうのとはちょっと違うかもしれない。うーん、なんだろう。そう、晴れ晴れとしてるの!だって、怒鳴られずに起きられたのって初めてなんだもの!すごく嬉しいわ。嫌な人がいないのも初めて。ふふ、今日は初めて尽くしね。あなたがここに連れてきてくれたのよね?ありがとう精霊さん。


 …どうして何も言ってくれないの…?


 そういえば、ここってどこなのかしら?目が覚めて少し経つけど、すごく居心地が良くってすぐ眠たくなってきちゃう。しかも初めて来た場所なのに、なんだか一度来たことがあるようなそんな気がするの。不思議よね。


 …それはいいのだけれど、そろそろこの目隠し外してくれない?

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人魚の瞳 ブナ @beech

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