第6話

帰路についたのは午後11時を回っていた。


いつものことであるが、かなり疲弊している。


他の仕事では味わうことのない憔悴具合である。


と言っても、私に他の仕事は出来ない。


どんな就職活動をしたのか、なぜ占い師になったのか、もっと言うと学生時代をどう過ごしたのかという記憶がない。


家族もいない。


私と世の中の接点は、この占い館の経営者とお客だけ。


友達が欲しいとも思わない。


私は使命があってこの仕事をしているのだということだけ、強く認識している。



電車の中であれこれ考えているうちに、最寄駅に着いた。


さて、どうしよう。


やはり探すべきなのだろうな、あの易者。



私は普段は通らないルートをなぜ今日に限って選んだのか、考えてみた。


占い師的な発想でいくと、それは易者に出会うためだったと言えるのだろう。


怖い気もしながら、私は易者の居た場所まで歩いた。


しかし、そこにはもう誰もいなかった。


店仕舞いする時間だったのかもしれない。


いつもここに居るのだろうか。


また明日、ここを通って、それで会えるのだろうか。


会えなくて、どこかホッとしている自分もいた。


夢だったんじゃないのかとも考えてしまう。


帰り道、あの易者の言葉を反芻していた。


「あなたは、3か月後にはいない。病気でも事故でもない。それは煙のように消えてしまう感覚に近い。でもその時のあなたの意識には『殺される』という強い恐怖が出ています。」


普通なら理解に苦しむ言葉だろう。


でも私には何となくそれがつかめていた。


この世の始まりの時、まさに煙のように自分は生まれてきたのだろうと想像していたからである。


あの易者にもう一度会わなければ。


ただそう思い、家へと急いだ。

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卜われ えみこん @emikon

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