嫌な予感は当たるもの・・・?

そしてそれから数日後、何事もなく過ごしていた悠のもとに、女性が現れた。


「あなたが蘭さんね、少し時間いいかしら?」


茶色く長髪のストレートを背中まで伸ばし、いかにも『権力を笠にして自分の天下を取ろうとする行いをしていそうな』容姿であり、身長もモデル並みにあり、実際に笑ったらお嬢様の高笑いが聞こえそうではあるが、と思ったが、それよりも。


(面倒くさそうな人につかまったなぁ・・・)


そう、悠はその状況を想定していたために、うんざりしていた。


「ええ、できれば手短にお願いしたいですが」


「あら、わたくしも同意見でしてよ。もっとも、あなたの返答次第ではありますが」


(ですよねー)


やっぱりか、と思っているが、歩みをとりあえず来訪者に近づくために進める。


すると、少し歩きますわよ。と言われ、そのまま歩き出した。


「・・・」


「・・・」


黙々と歩く2人。


ついたのは、この前菫と初めて会った公園。


「で、ついてきた理由、わかってますの?」


「まぁ、おおよその検討は。ベタですし、絡まれるタイミング的にもそうだろうなと」


冷静に頷く姿に、ふふん、と笑って見せる女性。


「なら話が早いですわね。ええ、用件は一つ。あの方に近づくのを止めてくださる?」


あー、ベッタベタね。と思った悠は、肩をすくめた。


「向こうから構って、と言いに来る場合は、どうすればいいんですか?避けても避けても、見つかるんです」


「あら、既に動いていたのね・・・?え、構って、と言われるのですか?あの方に?」


「え、言わないんですか?」


お互いに、何かが違っていると感じたため、確認を取る。


「あの方はご自身の希望をなかなかおっしゃってくださらないから、私たちが意図をくみ取って動くしかありませんの。わかるかしら?」


「え、そんなに寡黙な子じゃないですよね?」


「「ん?」」


「って、子、ってどういうことですの?!あなたはそこまで気安い関係だとおっしゃるのですか!?」


「え、身長的には子、ですよね」


「何を言っているの?!あの方は私たちよりも背が高いではありませんか!」


「えっ・・・。もしかして、」「どうやら私たち、」


「勘違いしてた?」「みたいですわね?」


そこで2人とも、お互いに相手がわかっているものだと思い込んでいたことに気が付いた。


「私が言っているのは、菫麻衣様ですわ。彼女の近くには、あなたのような平民は必要なくってよ」


「私が言っていたのは、瑠璃林・・・えーと、何君だったかな。ともかく、ちょっと小さくてかわいい男の子なんだけど。

あぁ、麻衣かぁ。確かに寡黙だけど、結構伝えてくれるよ。つい一昨日は初カラオケに行ったなぁ」


「菫様を名前で呼び捨てに!?そしてカラオケですって!?」


彼女にとってはとても衝撃的だったのだろう。彼女は今日一番の大声を出した。


そのままふらりと倒れそうなところを、誰かに抱き留められた。


「・・・何、してるの。すめらぎさん」


「えっ、す、菫様!」


「こんにちは、悠。楽しかったね」


「うん、こんにちは、麻衣」


笑顔で会話するさまに更にショックを受けたようで、皇と呼ばれた女性は気絶してしまった。


それからの菫の対応は早かった。


どこかへ電話をして、すぐにベンチに皇を寝かせる。


そして、困ったように笑顔を向けて、悠に言う。


「ごめんね。彼女、悪くないんだけど、一応親衛隊長、やってるみたいで」


「うん、ひしひしとそれは感じてたよ。」


そしてやってきたのは、いかにも執事な風貌の優男。


2人に一礼して、車で皇を送って行った。


「で、どうしたの?何かされた?」


「ううん、何もされてないよ?」


「そっか、よかった」


そう言って抱きしめる菫。


「えっ、どうしたの、麻衣?」


「2人で何か話してて、困ってそうだった。けど、どうしようか、って・・・」


「あぁ、そういうことね。大丈夫だよ、ありがとう」


笑ってそう悠が言うと、すぐ近くに微笑みを浮かべた菫がいた。


「今日は、もう帰る、よね。送ろうか?」


「うーん、わかった。じゃあお願いしようかな?」


帰りに菫は何人かの女性の視線を感じたが、みんな菫を見て逃げて行った。


それが誰なのか、どんな目的なのかは、彼女は知らない。

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「ねこ」と暮らす日常 ゆきな @yukinarumy

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