第8章 『本物の中二病?』の少女たち
085 第8章 『本物の中二病?』の少女たち
≪ ≪ ≪
《ボクが考えた未確認生物なラジオタイム》
DJ こんばんは。『土曜の夜はあっちこっちでサタデーナイトっ!』――DJのアッチコッチ
アシ こんばんは。臨時アシスタントのキャサリン桜島です。
DJ あのさあ、みんな。先週予告していた通り、今日はいつもアシスタントをしてくれているジェーンが、親戚の法事でハワイに帰っちゃっているんだ。
そこで、代理アシスタントとしてキャサリンに来てもらっているんだよ。
アシ よろしくお願いします。
DJ よろしく。
キャサリンは長崎県出身だったっけ?
アシ 鹿児島です。
DJ オッケー! 鹿児島! オッケー! じゃあ、まずはさっそく、一枚目のおハガキの紹介だあ!
アシ こちらは愛知県にお住まいのラジオネーム、『裏山に三羽ニワトリがいた気がする過去を持つ……』さん――。
四十六歳、主婦の方です。
《こんばんは、原山さん、ジェーンさん。そして日本全国のリスナーのみなさん》
DJ こんばんは。
アシ じゃあ、ジェーンさんの代わりに、こんばんは。
うふふ。今日は私ですみません。
DJ さっきも言ったんだけど、ジェーンは親戚の法事でハワイなんだよねえ。ごめんよー。
アシ うふふ。続きを読みますね。
《この間、他のリスナーさんからのハガキの中で、朝食前に歯を磨くって話があったと思います》
DJ ああ、あったあった。確かにそんなハガキ、あったよねぇ。
寝起きは口の中の細菌が繁殖していてね、汚いから朝食前に歯を磨くってやつ。
うんうん、覚えてるよ。
アシ 《そのハガキへの反論です――》
DJ なんだい、なんだい、穏やかじゃないねえ♪
アシ 《私は歯を磨くのはやっぱり朝食後だと思うんですよ。だって歯磨き粉の味が残っている口のままで、朝食は楽しめないでしょ?
朝食前の口の中が汚いってことが、どうしても気になるのなら、念入りにうがいをすればいいと個人的には思っています。
それと昨日までの五日間で、同じような内容のハガキを二十三枚も送ってしまいました。
スタッフの皆さんにはきっと、粘着質で嫌な女だと思われていることでしょう。
けれど、どうしても我慢できずに、今日もまたハガキを書いてご意見させていただきました。
――というか読んでもらえるまで、同じ内容のハガキを送り続けるつもりです。
もしオンエアでハガキを読んでいただき、スタジオ内が変な雰囲気になったら、すみません。あとステッカー下さい》
というおハガキなんですけど――。
全然、変な雰囲気になんかなっていないですよねえ、原山さん。
DJ うんうん。オッケー♪ スタジオ内は変な雰囲気にはなっていないですよぉお♪
そして、言いたいことはよーくわかった。
そういうことなら我慢していないで、ラジオを使ってどんどん吐き出した方がいいね。
アシ そうですね。
DJ はい。じゃあ、愛知県の『裏山に三羽ニワトリがいた気がする過去を持つ……』さんには、ちゃんと番組のステッカーを送っておきまーす。
毎週毎週、一人でたくさんのおハガキ、本当にありがとうね。
アシ というわけでこの後は、『大提案! 朝食前に歯を磨こうのコーナー』です!
―― ♪ ジングル ―― CM
(中略)
―― ♪ ジングル ―― CM明け
DJ はい。四時間半に渡ってお送りしてきました、『土曜の夜はあっちこっちでサタデーナイトっ!』ですが、本日はこれにて終了です。
アシ お相手は、臨時アシスタントのキャサリン桜島と。
父親 そのキャサリン桜島の実の父親であるトイプードル桜島と。
DJ 来月で三十八歳になる、アッチコッチ原山でした。
また来週! バイバーイ。
エンディング
* * *
スタッフA はーい、オッケー。あざーっす。
どもども、二人ともホント、お疲れしたー。
DJ お疲れー。
キャサリンも今日はホントありがとネ! ナイス代打。5打数3安打って感じ。猛打賞。
アシ えー、2安打足りなくないですかあ。
もう、原山さんったらー、5打数5安打でしたよぉ、うふふ。
またいつでも代打に駆けつけますから、何かあったら呼んでくださいね。
DJ トイプードルさんも本当にありがとうございました。
また今度、オランダ製のサブウーファーの置き場所で、義理の弟と
父親 ええ、いいですとも。
スタッフB ナカジマさーん、ナカジマさーん、すいやせ~ん。
スタッフA うん? どしたー?
スタッフB あのー、今日の放送中に読んだリスナーからのハガキ、全部紛失しました。
スタッフA なっ? なっ?
スタッフB すいやせ~ん。
スッタフA バーカーヤーロー。なに笑顔でそんなこと報告してくれてんだよ!
お前、とんでもないよぉ! どうすんだよ……?
スタッフB どうしやしょう。
――そして深夜。
ラジオ局の非常階段で、何者かがハガキをむしゃむしゃ食べる音がする。
〈おしまい〉
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます